さまざまな病気

口・鼻・のど ドライマウス


緊張や興奮による一時的な口の渇きは、誰もが経験することです。しかし、水を飲むなどすればおさまる一時的な渇きと違い、常に口の渇きを感じる状態が3ヵ月以上続くのがドライマウスです。口臭や口の中のうずくような痛み、ただれ・ひび割れ、出血などの症状をともなうことがあります。

日常生活から考えられる原因

やわらかい食品の多い食生活

食べ物をよく噛み、あごや舌の筋肉を動かすと唾液が出やすくなります。しかし、やわらかい食品が多く、食べごたえのある食品を食べなくなった近頃の食生活では、あごや舌の筋肉が衰えてしまいがちなため唾液の分泌量が少なくなり、口の中が乾きやすくなります。

精神的な緊張やストレスの多い日常生活

リラックスしているときは唾液が出やすく、逆に精神的に緊張したときやストレスがあるときは唾液が出にくくなります。緊張やストレスが解消されたり弱まったりすれば唾液の量も正常に戻りますが、緊張やストレスの多い状態が続くと、口の渇きが慢性化することがあります。

アルコールの飲みすぎ

アルコールを飲むと、アルコールを尿や汗と一緒に排出しようとする利尿作用が働き、体内は脱水状態になります。そのため、アルコールの飲みすぎが続くと、体内の水分バランスが崩れ、唾液の分泌が減少し、ドライマウスを引き起こすことがあります。

加齢による筋力の低下

加齢によって口の周りの筋肉が衰えてくると、唾液が出にくくなり、ドライマウスを引き起こすことがあります。また、全身の筋肉が衰え姿勢が悪くなり猫背であごが前に出ると、自然に鼻呼吸ではなく口呼吸になり、常に口を開けた状態になるため、ドライマウスになりやすくなります。

薬の副作用

さまざまな薬の副作用でドライマウスが起きることがあります。花粉症の治療に使われる抗ヒスタミン薬、痛みを抑える鎮痛薬、感情の落ちこみやたかぶりを抑える抗うつ薬や向精神薬、降圧薬や体内の水分を排出させる利尿薬など、原因となる薬の種類は多岐にわたります。薬の添付文書に記載されている副作用で「口渇」とあるのが、これにあたります。高齢者にドライマウスが多くみられるのは、服用している薬が多く、その副作用が原因と考えられます。

ドライマウスの原因となる主な疾患

ドライマウスを引き起こす主な疾患には、糖を含んだ尿が大量に排出され脱水状態になりやすい糖尿病、体がマヒ状態になることがある脳卒中、体を守る免疫の異常によって起こるシェーグレン症候群があります。また、ホルモンの異常やバランスの崩れによって起こる更年期障害の症状の一つにも挙げられます。

ドライマウスをともなう疾患

糖尿病

糖尿病は膵臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。血糖コントロールができない高血糖状態では、糖を含んだ尿が大量に排出されるため体内が脱水状態になり、口の渇きを感じることがあります。また、疲労感や体重の減少などがみられ、治療をせずにいると神経や目、腎臓や血管などの病気を誘引することになります。

くも膜下出血、脳出血、脳梗塞

くも膜の内側の動脈が破裂して、くも膜下腔に出血が起きるくも膜下出血では、突然激しい頭痛と吐き気、嘔吐を生じ、意識を失って危険な状態に陥ることがあります。脳内の細い動脈が破れる脳出血では、激しい頭痛や吐き気、手足の麻痺、片麻痺などの症状があらわれます。脳梗塞の場合も強烈な頭痛や吐き気とともに、体や視覚・聴覚など五感の麻痺が起こります。これらの脳卒中により口の周りの筋肉も麻痺することがあるため、唾液が減少し、ドライマウスを引き起こすことがあります。

シェーグレン症候群

体を守る免疫の異常によって起こる疾患で、膠原(こうげん)病の一種です。口や目、皮膚など全身に乾燥がみられます。さらに、息切れや関節痛、気分の落ち込みなどの症状があらわれることも多くあります。圧倒的に女性に多く、発症は40~60歳代に集中しています。関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど、他の膠原病との合併症も多くみられます。

更年期障害

閉経の前後、約10年間の更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化し、心や体にさまざまなトラブルを引き起こします。唾液の分泌は女性ホルモンのコントロールを受けているため、更年期に起こるホルモンバランスの乱れにより唾液の分泌が減少し、口の渇きを感じることがあります。その他、疲れやだるさ、肩こり、のぼせやほてり、イライラや不安感などの症状があらわれます。

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更年期障害

日常生活でできる予防法

お酒は適量にする

アルコールが体内に入ると、アルコールの利尿作用によって体内の水分が排出され、体は脱水症状を起こします。体内が脱水症状になることで、唾液の分泌量も減少することがあります。体の中が脱水状態にならないように、お酒を飲むときは水も一緒に飲むように心がけ、健康のためにも過度の飲酒は避けるようにしましょう。

ストレス過多を解消する

ストレスがあるときは唾液が出にくくなるため、ストレスのある状態が続くと慢性的な口の渇きに悩まされることがあります。日頃からストレスを溜めない生活を心がけましょう。また、ストレスに強い心身をつくるには、運動が効果的です。1日5分のストレッチからでも習慣づけるようにしましょう。

噛みごたえのある食品を積極的に食べる

やわらかく噛みごたえのない食品ばかりを食べていると、口の周りの筋肉が衰えていってしまいます。さきイカやみりん干し、ゆでた豚もも肉や焼いた牛もも肉、乾パンや餅、油揚げ、たくあん、生のにんじんやセロリ、アーモンドなどのナッツ類、かりんとうやせんべいなど噛みごたえのある食品を積極的にとりましょう。

対処法

部屋の湿度を調整し、外出時にはペットボトルを持ち歩く

エアコンなどで乾燥した部屋にいると鼻が乾き、口呼吸の原因となります。空気が乾きすぎないよう、常に部屋の湿度に気を配りましょう。また、外出する際はペットボトルを持ち歩き、常に口の中を潤すようにしましょう。(ただし、糖分の入った飲料は虫歯や糖尿病の原因になるので避けるようにしましょう。)

酸味のある食品やアメ、ガムで、唾液の分泌を促す

レモンや梅干しなど、すっぱい食品は唾液の分泌を促します。しかし、重度のドライマウスに悩む人には刺激が強すぎて痛みをともなうことがありますので注意しましょう。また、アメやガムを食べたり噛んだりすると口の周りの筋肉が鍛えられて、唾液の分泌を促すことができます。

入れ歯があっているかどうか確認する

「噛む」という行為がしっかりできれば、唾液はきちんと分泌されます。ところが、入れ歯があっておらず、しっかり噛むことができないと、唾液が十分に分泌されません。こうした場合は一度歯科医を受診し、きちんと自分に合った義歯をつくってもらいましょう。

口の周りの筋力を鍛えたり、唾液腺のマッサージをする

唾液の分泌を促すためには、口の周りの筋肉を活発に動かすことが大切です。舌の下側と下あごをくっつけている部分を伸ばすようにして、舌打ちするなどの運動で口の周りの筋力を鍛えましょう。また、舌のつけ根の真下のあごの部分、あごのエラから3センチほど内側、耳たぶの下などを指で押して行う、唾液腺のマッサージも効果的です。

病院で診察を受ける

口の渇きを長期間にわたって感じる場合は、糖尿病や脳卒中などの疾患が隠れていることがあります。まずは、かかりつけ医の診察を受けましょう。

唾液が減ると口臭がきつくなる!?

口臭の主な原因は、口の中で増えた細菌が死んでいくときに出す腐敗臭です。虫歯や歯周病の人の口臭が強いのは、虫歯や歯周病によってできた歯の穴の中や炎症を起こした箇所にたくさんの細菌が付着しているからです。唾液は口の中の食べかすを洗い流したり、細菌の増殖を抑えたりしますが、唾液の分泌量が減ると、口の中の細菌が増え、口臭がきつくなることがあります。きちんと歯磨きを行い、胃腸の調子が良いにもかかわらず口臭が気になるという人は、ドライマウスを疑った方がいいかもしれません。