口・鼻・のど においがわからない
空気中を漂うにおいの粒子が鼻腔の奥にある嗅(きゅう)粘膜に届くと、その情報は嗅神経を介して脳に伝達されてにおいを感じます。においを伝達するこの経路に異常があるとにおいがわかりにくくなります。経路の異常には鼻づまりと、嗅神経の異常によることがありますが、約7割は鼻づまりによるものです。
風邪などで鼻が詰まると、においの粒子がにおいを感じる嗅(きゅう)粘膜まで届かなくなり、においがわかりにくくなります。この嗅覚の低下は、鼻づまりが解消されれば治る一時的なものです。
年をとると、視力や聴力と同様に嗅覚も低下します。これは、においを感じる嗅粘膜やにおいを伝える嗅神経の機能が低下することで起こるものです。
鼻づまりによる嗅覚の低下には、風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、鼻中隔彎曲(びちゅうかくわんきょく)症などがあります。また、頭部外傷や脳外科手術、脳腫瘍、アルツハイマー病、パーキンソン病などで嗅神経経路に異常が起きると、においがわからなくなることがあります。
風邪はウイルスの感染によって、鼻やのどに急性の炎症を起こす疾患です。鼻水やくしゃみ、のどの痛みからはじまり、発熱や頭痛、寒気、全身のだるさを感じます。ウイルスによって嗅粘膜が炎症を起こすと、一時的ににおいがわかりにくくなります。
ウイルスや細菌の感染による急性鼻炎が広がり、副鼻腔という鼻の周囲の空洞に膿が溜まって炎症を起こすのが急性副鼻腔炎です。急性副鼻腔炎が3ヵ月以上長引くと、蓄膿症とも呼ばれる慢性副鼻腔炎に移行します。粘り気を帯びた膿のような鼻水が続き、頭痛や微熱、集中力の低下などの症状がみられます。どちらも鼻づまりが起きている状態になるので、においが嗅粘膜まで届かなくなり、においがわかりにくくなります。
アレルギーの原因物質が体内に侵入して、アレルギー反応を引き起こし、鼻の粘膜に炎症を起こします。突然、発作のようなくしゃみが続いたり、水のような鼻水、鼻づまりなどの症状を引き起こします。また、鼻づまりによる影響で、においがわかりにくくなります。アレルギー性鼻炎にはハウスダストが原因のような通年性のものと花粉が飛散している時期に起こる季節性のものがあります。
鼻を左右に分けている中央の仕切り部分である鼻中隔が、左右どちらかに歪んでいたり、曲がっているのが鼻中隔彎曲症です。慢性的に鼻の空気の通りが悪くなり、鼻づまりを起こしてにおいがわかりにくくなることがあります。また、鼻血が出やすくなったり、いびきをかきやすくなることもあります。
頭蓋骨の内側にできる腫瘍を総称して脳腫瘍といいます。だんだんとひどくなる頭痛、吐き気、嘔吐の症状が多くみられます。腫瘍によって脳の機能が障害されると、腫瘍のできた部位によっては、けいれんや手足の麻痺、耳鳴りやめまい、ろれつが回らない、視野が狭くなるなど、さまざまな症状があらわれます。さらに頭部外傷などでも嗅神経経路が障害をきたし、においがわかりにくくなることがあります。
風邪による鼻水や鼻づまりには、風邪薬が効果的です。また、アレルギー性鼻炎の場合は、鼻炎用の内服薬や、速効性のあるスプレータイプなどを使用しましょう。
鼻づまりが続いてにおいがわかりにくいときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。鼻づまりの症状がないのに、頭痛や吐き気をともない、においがわからないようなときは、重篤な疾患の恐れもありますので、主治医や脳外科、神経内科の診察を受けましょう。
「ストレスが溜まったらアロマでリラックスしましょう」とは良くいわれることですが、ではなぜいい香りをかぐとリラックスできるのでしょうか。においを感じる嗅神経のある大脳辺縁系は、自律神経系をつかさどる視床下部と連携しています。自律神経は、心身のリラックスに関わるところですから、良い香りを嗅ぐと反射的に心身が安らぐのです。