耳 耳が聞こえにくい(難聴)
音や話し声が聞こえにくい状態が難聴です。高い音域が聞こえにくくなったり、逆に低い音域が聞こえにくくなったりすることもあります。難聴は外耳、中耳に原因のある難聴と内耳、聴神経、脳に原因のあるタイプがあります。これらの難聴を引き起こす一番の原因となる疾患は中耳炎で、次に多いのが内耳障害によるものです。
耳あかが溜まって外耳道をふさいでしまうと、耳が詰まったような感じになって、聞こえにくくなることがあります。また、耳に水が入ったり、ゴミ、ダニやカなどの小さな虫が耳に入ったときにも耳が聞こえにくくなることがありますが、原因を取り除けば治ります。
耳元で爆発音がしたり、ヘッドホンやコンサートで大音量の音楽を聴いたときなどに、直後から強い難聴が起こり、耳が聞こえにくくなったり耳が詰まった感じになることがあります。また絶え間ない騒音に囲まれる環境の中に長時間いることでも、同じく難聴の症状があらわれます。これらは、内耳の蝸牛(かぎゅう)の感覚細胞が大きな音や衝撃により損傷を受けたことによって起こるもので、早期に治療を受ければ改善することもあります。
耳を何かにぶつけたり、耳を強くぶたれたり、耳かきで突いた後などに、急に聞こえが悪くなったようなときは、鼓膜を損傷している可能性があります。小さな傷は自然に塞がりますが、痛みをともなうようなときは、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
耳の中の気圧は、通常は外の気圧と同じ状態に保たれています。しかし、飛行機の離着陸時やスキューバダイビング、エレベーターの急下降時のときのように急激に外の気圧が変化すると、この変化についていけず体の内外に気圧差が生じます。この気圧差によって鼓膜が内側に押し出されることで痛みやキーンという高い音の耳鳴り、少しの間、耳が聞こえなくなるなどの違和感を生じることもあります。
加齢にともない、内耳や神経が老化することで機能が衰え、耳が聞こえにくくなります。これは、人によって程度の違いはありますが、必ず起こる老化現象です。多くは50歳代から聞こえにくくなりますが、早い人では30歳代から症状があらわれる場合もあります。
仕事や人間関係などによる精神的ストレスや、睡眠不足などの生活習慣、騒音などの生活環境が体に与える身体的ストレスが長く続くと、自律神経が乱れやすくなり難聴が起こることがあります。同時に耳鳴りやめまいが起こることも多く、それらの症状がストレスとなり、さらに症状を悪化させる悪循環に陥ることがあります。
結核の治療薬は、音を感じる細胞に障害をもたらし、難聴やめまい、耳鳴りを引き起こします。また、リウマチの治療薬や利尿薬、抗がん剤も難聴を起こすことが知られています。
突発性難聴や内耳の異常が原因となるメニエール病では、難聴とともにめまいや耳鳴りが起こります。また、中耳炎や外耳道炎、耳硬化(じこうか)症、耳管狭窄(じかんきょうさく)症、外リンパ瘻(ろう)などの中耳や外耳の疾患によって生じる場合もあります。その他にも、聴神経腫瘍、耳性帯状疱疹、糖尿病、高血圧症、更年期障害、低血圧症、貧血、自律神経失調症なども難聴の原因になります。
音を感じる器官である内耳の感覚細胞は、加齢とともに徐々に数が減っていきます。そのため、高齢になると聞こえにくくなるのが老人性難聴です。初期には高音域が聞こえにくくなり、しだいに中音域、低音域へと難聴の範囲が広がっていきます。キーンという高音の耳鳴りをともなうこともあり、これらの症状は通常両耳に起こります。
突然、片方の耳に激しい耳鳴りと難聴が起こる疾患で、約半数が回転性のめまいをともないます。金属音、電子音のような耳鳴りが特徴で、重症化した場合は耳がまったく聞こえなくなることもあります。めまいの発作は一度きりで繰り返すことはありません。ウイルス感染や内耳の血流障害が原因ともいわれていますが、正確な原因は分かっていません。また、過労やストレスが引き金になることが多いといわれています。
細菌やウイルスに感染し、中耳に炎症が起こる疾患で、急性中耳炎では風邪やインフルエンザなどの感染症の後に発症することが少なくありません。中耳に膿が溜まり、その膿が出口を求めて鼓膜を押すために強い耳の痛みと難聴が生じ、発熱をともないます。鼓膜が破れると、粘液性から黄色っぽい膿性の耳だれが出ます。慢性化膿性中耳炎では難聴と慢性的な粘液性あるいは膿性の耳だれが特徴です。
鼓膜の奥(中耳)に溜まった液体が長時間排出されないままになっている慢性の炎症疾患のことです。成人では耳管の疾患に続いて、また幼小児では中耳炎の治療を途中でやめてしまった時に多く起こります。主な症状は耳詰まり感、難聴、耳鳴りです。滲出性中耳炎は痛みや耳だれがないので放置してしまうケースがしばしばあるので要注意です。
鼓膜の一部が奥に入り込んで、そこに垢や老廃物がたまって塊が形成されます。その塊が真珠のように見えることから真珠腫性と呼ばれています。腫瘍と間違われやすいのですが、腫瘍ではなく炎症性の疾患です。主な症状は耳だれと難聴ですが、初期の段階ではみられません。たまった塊に細菌感染が起こると膿や血液の混じった耳だれがみられるようになり、痛みが強くなります。治療しないと重度の難聴や顔面神経麻痺、髄膜炎を起こすことがあります。
耳と外の気圧を調整している耳管の内腔が狭くなって働きが低下するのが耳管狭窄症です。耳管の働きが低下すると、鼓膜が振動しにくくなり難聴になり、軽い耳鳴りや耳が詰まった感じや低音の耳鳴り、自分の声がこもって聞こえるなどの症状があらわれます。のどや鼻に炎症が起きたときや、飛行機に乗ったときの急激な気圧の変化などが原因で起こりやすくなります。
中耳や内耳の骨に異常が生じ、音の振動が十分に内耳に伝わらなくなる疾患です。多くは両耳に難聴があらわれ、徐々に聞こえにくさが増していき、耳鳴りをともなうこともあります。以前は日本では少ない疾患でしたが、食習慣の欧米化によって、日本でも発病数が増加しています。耳硬化症は、手術で聴力改善が得られる数少ない難聴の一つです。
自分や周囲がぐるぐる回るめまいと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起こる疾患です。その他に強い吐き気や嘔吐をともなうこともあります。難聴は、とくに低い音が聞き取りにくくなる特徴があります。過労やストレスが引き金になることがあります。放置すると耳鳴り、難聴が進行します。
脳腫瘍の一種で、脳から耳に繋がっている聴神経に発生する良性の腫瘍です。はじめは軽い耳鳴りがあって、次第に強くなっていくのが特徴です。また、片方の耳の後ろに痛みを感じたり、軽いめまいがあらわれることもあります。腫瘍が大きくなると、難聴が出現し腫瘍を切除しても聴力がおとろえたままになったり、顔面神経麻痺が起こることがあります。
飛行機に乗っているときやいきんだときなど、中耳の鼓室という部分や脳内の圧力が急激に変化して、内耳の窓にあたる膜が破れて中耳に内耳のリンパ液がもれる疾患です。破れるときに、ポンと音が聞こえることがあります。これが外リンパ瘻です。耳が詰まった感じや難聴、キーンという音や金属音、電子音のような耳鳴り、めまいなどの症状があらわれます。
帯状疱疹ウイルスが内耳や顔面神経に感染する疾患です。はじめに耳痛や頭痛が起こり、次いで耳の穴の近くに痛みをともなう小さな赤い発疹や水疱が多くあらわれます。そして、回転性の激しいめまいと耳鳴り、難聴が起こり、さらに、顔がこわばったり、目を開けたり閉じたりできなくなるなどの顔面神経麻痺があわれるのが特徴です。
ストレスが原因となって難聴が起こるケースは少なくありません。問題を1人で抱えこまず、普段から気軽に相談できる人をもつことや、趣味やスポーツ、旅行など、楽しむ機会を多くもつことが大切です。また、1日の中で少しでも心身をリラックスさせる時間をつくり、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
難聴を予防するためには、傷ついた末梢神経の修復を助けるビタミンBを積極的にとるようにしましょう。ビタミンBはレバー、あさり、しじみ、さんまなどに多く含まれています。食事だけでビタミンを摂取することが難しい場合は、市販のビタミン剤を活用することも一つの方法です。
飛行機の離着陸時や、電車がトンネルに入ったとき、高層ビルのエレベーターで気圧差を感じて耳の痛みや聞こえにくさを改善するには、口を大きく開くのが効果的です。つまり、あくびや唾液を飲み込んで、耳管を開ける耳抜きをするとよいのです。またアメをなめたりガムを噛んでいると、耳の痛みや難聴をやわらげることができます。試してみましょう。
難聴は、日常生活に大きな支障が出るおそれがあります。聞こえにくいと感じたときはもちろん、耳鳴りやめまいをともなう違和感があるときは、耳鼻咽喉科で診察を受けましょう。
耳鼻咽喉科で小さな部屋でヘッドホンをつけ、音が聞こえたら手元のボタンを押すという検査をしたことはありませんか?あの検査は、高さや大きさの異なる周波数の聞こえ方を調べ、その結果から難聴の有無やタイプ、程度などを判断するものです。早くボタンを押さなくてはと思いがちですが、音が聞こえているあいだに押せばいいので、あせる必要はありません。