全身 ふらつき・平衡感覚の乱れ
ふらつきは、平衡感覚を失って足取りがおぼつかなくなる状態です。乗り物酔いや二日酔いでふらついたり、体調不良で一瞬ふらつくようなことは日常でもみられますが、頻繁に起こるようなときは平衡感覚に関係する神経や脳に障害を起こす疾患を疑う必要があります。
朝食を抜いたり、栄養バランスが偏ったりした食生活や、疲れ、睡眠不足によって、ふらつきが起こることがあります。これは十分な栄養の補給、休息で治まる一時的なものです。
アルコールを飲みすぎると、脳内のアルコール濃度が高くなって、ふらつきや吐き気、嘔吐などの酔いの症状があらわれます。次の日になっても、アルコールが体内に残っている場合は、二日酔いの症状としてふらつきが起きることがあります。
車や電車、船などに乗ったとき、乗り物酔いを起こすことがあります。これは乗り物の揺れやスピードの刺激が体にとって「限界」を超えると、異常として脳に伝わり、胃や腸や心臓、血液などをコントロールしている自律神経に変調をきたすことによるものです。ふらつき、吐き気などの症状とともに頭重感、生つばやあくび、冷や汗が出て、顔色が蒼白になり嘔吐を引き起こすこともあります。
立ち上がるときは、自律神経が血管と心臓に作用して血圧の変動を調節しています。この自律神経が十分に機能していないと、急に立ち上がったときに血圧が下がり、脳に送られる血液の量が一時的に少なくなることでふらつきが起きます。
血圧を下げるための降圧薬やうつ症状などを抑えるための精神安定薬、ときには総合かぜ薬や鼻炎薬でも体調によっては副作用として、ふらつきやめまいなどを起こすことがあります。
脳梗塞では、発作の前にふらつきなどの前触れが起こることがあります。脳出血では前触れはなく、発作が起こると急にふらついて上手く歩けなくなります。脳梗塞も脳出血も、死に至る危険のある疾患です。脳腫瘍の場合も腫瘍が拡大するとふらつくことがあります。その他、内耳の障害であるメニエール病でもみられます。
脳梗塞は脳の血管内腔の動脈硬化が進行し、血管が狭くなっているところに血液の塊が詰まることによって血流が止まり、脳の組織が破壊される疾患です。血液の塊が詰まると、片側の手足や顔の麻痺、意識障害や言語障害などの症状があらわれます。約3割の人に発作の前触れがあり、ふらつきや舌がもつれるなどの症状が起こります。
高血圧などが原因となって、脳内の血管が破れて脳の中に出血による血液の塊ができる疾患です。出血が起きると、ふらつきによってまっすぐ歩けなくなったり、意識障害や手足の片方の麻痺が起こったり、徐々に強くなる頭痛などの症状があらわれ、言語障害や手足の麻痺などの後遺症が残る場合も少なくありません。出血を起こした場所によっては、数分のうちに昏睡状態におちいり、死に至るケースもあります。
頭蓋内にできた腫瘍が大きくなることによって、脳や脳周囲の脳組織に侵入したり圧迫したりして、脳機能に障害をもたらす疾患です。特徴的な症状は頭痛と吐き気、嘔吐です。頭痛は早朝に痛みを強く感じ、日中にかけて次第に弱くなりますが、日を追うごとに頭痛がどんどん強くなります。さらに腫瘍がどこで発生したかによって、記憶力や判断力の低下、手足の麻痺やけいれん、ふらつきなど、さまざまな症状があらわれます。
自分や周囲がぐるぐる回るめまいによるふらつきと、どちらか一方の耳にだけ起きる耳鳴り、そして難聴の3つが同時に起き、多くの場合、強い吐き気や嘔吐をともないます。過労やストレスが引き金になることがあります。危険な疾患ではありませんが、放置すると耳鳴り・難聴が進行します。
健康な人でも急に立ち上がったり起き上がったとき、立ちくらみすることがあります。この立ちくらみが日常の動作の中で頻繁に起こるような場合は起立性低血圧症が疑われます。これは自律神経の一時的な障害で、急に立ち上がった時に脳の循環がとどこおり、血液が下半身に停滞してしまって、低血圧と脳の血流不足が起こるために起こります。クラクラとする立ちくらみや目の前が暗くなったり、ひどい時は気を失って倒れることもあります。
精神的なストレスや過労が引き金となって自律神経が乱れ、心や体に不調があらわれた状態です。不安や緊張、抑うつなどの心のトラブルにより、吐き気をはじめ多汗、全身の倦怠感、頭痛、肩こり、手足のしびれ、動悸、不整脈、めまい、ふらつき、不眠などの症状があらわれます。あらわれる症状は人によって大きく違うのが特徴です。
閉経前後の約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少により自律神経のバランスが崩れてほてり、のぼせ、イライラ、息切れ、動悸、めまいやふらつき、肩こりなど心と体にさまざまなトラブルが生じます。ふらつくようなめまいは、脳に流れる血流の変化によって感じられます。また、顔が突然カーッと熱くなって首や背中に汗が流れる症状はホットフラッシュと呼ばれ、更年期障害の前半にあらわれる最も代表的な症状です。
体調によるふらつきを予防するには、ビタミンやミネラルのバランスの整った食事をとるようにしましょう。1日3食、規則正しく食べることも大切です。また、睡眠をしっかりとることも大切で、寝る前に40℃前後のぬるめのお風呂にゆっくりとつかると深い眠りを得ることができます。
自分の適量を知り、それを超える量やペースにならないよう、気をつけて飲むことで酔いを防ぎましょう。飲みすぎてしまったときは、水を大量に飲むことで二日酔いを緩和できます。
酔い止めの薬を飲むことは薬効もさることながら、「薬を飲んだから、もう大丈夫」という安心感も得られ、いっそうの効果が期待できます。服用する効果的なタイミングなど、添付文書をよく読んでから服用するようにしましょう。
ふらつきが起きたときは、あわてないことが大切です。転倒しないよう注意しながら、座れる場所や横になれる場所へ移動し、楽な姿勢でしばらく休みましょう。
更年期障害によるめまいやふらつきなどには、効果をあらわす漢方薬などが販売されています。更年期では体のさまざまな場所に不調が起こりやすいので、漢方処方を活用して、体全体のバランスを整えましょう。
頻繁にふらつきが起こるようなときは、疾患が隠れている場合がありますので、かかりつけ医の診察を受けましょう。ふらつきとともに意識障害や呼吸困難が起こるようなときは、脳出血や脳梗塞が疑われます。ただちに救急車を呼んで、病院へ搬送しましょう。
脳梗塞を起こした人の約3割は、本格的な発作の前触れにふらつきなどの発作を体験しています。ふらつき以外にも、体の半身がしびれたり、力が入らなくなったり、物が二重に見えるなどの脳梗塞に似た症状があらわれ、数分~30分間ほど続きます。前触れのあと、24時間以内の発症がとくに多いとされています。すぐに専門医を受診して治療を行うことで、死の危険を回避することができます。