女性特有 おりものの変調(異常)
妊娠中や生理のとき以外に膣や子宮から出るのがおりもので、こしけ、帯下(たいげ)という呼び方をすることもあります。おりものは細菌が膣を通して体に入り込むのを防ぐ働きや、精子がスムーズに子宮内に到達するための手伝いをしています。生理の周期によって量や色、粘り具合が変化していますが、チーズや酒かすのようなおりもの、茶褐色や黄緑色のとき、悪臭がするときは疾患を疑う必要があります。
おりものは、ホルモンの分泌が盛んな20~30代に量が多くなります。そして40代を迎えるころから閉経に向けて、女性ホルモンの分泌が低下するとともにおりものの量も減少していき、閉経後には極端に少ない量のおりものしか出ません。そのため、うるおいや弾力が減り、性行為などの刺激で炎症を起こしたり、痛みを感じることがあります。
おりものの量や色が変化する疾患の多くは、性感染症(STD)です。外陰膣カンジダ症、膣トリコモナス症、淋菌感染症、性器クラミジア感染症がそれにあたります。また、子宮頸がん、子宮頸管ポリープ、子宮頸管炎、子宮膣部びらんなどの子宮の疾患によってもおりものの量や臭いなどが大きく変化することがあります。
過労や妊娠などによって体力や抵抗力が低下したときに、膣に棲んでいるカンジダ菌が異常に増殖して起こります。また、性交渉によっても感染することがあります。性器が赤く腫れあがり、ただれを起こすこともあります。強いかゆみを感じ、チーズや酒かすのような白いおりものが出ることが特徴です。
寄生虫の一種であるトリコモナスが、主に性交渉によって膣に感染する炎症疾患です。下着やタオル、浴室、便座などを介して感染することもあります。女性が感染すると、まずおりものの量が増えて性器に激しいかゆみを感じます。そのうち、黄色がかっていて泡立った臭いのきついおりものが出るようになります。
淋菌という細菌による性感染症です。女性は顕著な症状があらわれることが少なく、感染から数日後に外陰部のかゆみやおりものの増加が起こる程度なので、感染に気付かず慢性化することがあります。まれにおりものの色が黄色っぽくなることもあります。また、妊婦が感染すると、新生児の結膜炎を招き、最悪は失明の危険もあります。見過ごすと炎症が尿道や膀胱に広がり、排尿時に痛みを感じるようになります。
クラミジアという細菌による性感染症で、女性の性感染症では最も多い疾患ですが、黄色のおりものが多少増える程度の軽い症状のため、感染に気が付かない場合も多くあります。進行すると下腹部痛や性交痛があらわれます。また、不妊の原因となったり、妊婦の場合は胎児が産道を通過するときに感染し、重篤な肺炎や結膜炎を起こすこともあるので、注意が必要です。
20~30歳代に多い、子宮の入口にできるがんです。多くは性交渉によりHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することが原因となって発症します。初期症状はほとんどなく、感染すると細胞が変化し、数年かけてがんに発展します。進行の途中では、おりものが増えて茶色がかった色になったり、生理の期間が長くなる、不正出血や性交時の出血といった症状があらわれることがあります。
子宮の入り口(頸管)に、ポリープと呼ばれるキノコ状の良性の腫瘍ができる疾患です。おりものの量が増えたり、茶褐色に変化するのに加え、性交やスポーツの後、排便時のイキみのときなどに少量出血するなどの症状があらわれます。妊娠を経験した30~50代の女性に多く発生する疾患ですが、原因はわかっていません。
子宮頸管がクラミジア菌や大腸菌、ブドウ球菌などの感染で炎症を起こすと、臭いがきつく、黄色や黄緑色をした膿のようなおりものが出ます。また、炎症が強いと下腹部の痛みや微熱、腰痛をともなうこともあります。放置していると子宮や骨盤にまで炎症が広がり、不正出血、吐き気や嘔吐、高熱などがあらわれる子宮内膜炎や骨盤腹膜炎を引き起こします。
子宮の入り口がただれるのが子宮膣部びらんです。おりものが増えたり、性行為の後に少し出血したりしますが、多くは自覚症状がありません。びらんがあると細菌に感染しやすくなるため、子宮頸管炎などの原因になることがあります。また、子宮頸がんの初期と症状が似ているので、子宮膣部びらんに似た症状があらわれたときは、必ず婦人科を受診しましょう。
性感染症は、正しい知識を持ってパートナーとともに予防していくことが大切です。性感染症を防ぐためには、コンドームの使用が一番現実的で確実ですが、行為によっては防げない性感染症もあります。くれぐれも注意しましょう。
子宮頸がんは早期に発見できれば、ほぼ100%治癒します。しかし、自覚症状があらわれるころには進行していることがありますので、年に一度は積極的に定期健診を受けましょう。また、子宮頸がんは若い女性に多いので、厚生労働省では乳がんと子宮がんの定期検診を20歳以上の女性に勧めており、多くの自治体や会社の健康保険組合などが助成金の制度を設けています。
おりものの量や色、質がいつもと違うと感じたら、すぐに婦人科の診察を受けましょう。万が一パートナーが性感染症に感染していたときは、自覚症状がなくても感染している可能性がありますので、パートナーと一緒に診察を受けましょう。
おりものの状態は、健康状態によっても大きく変化するので、自分では気付いていない体の不調のサインをチェックするのに役立ちます。水っぽくて白いおりものが多く出るときは、胃腸が弱っているサインです。赤っぽく若干臭いが強いときは、ストレスが溜まっている証拠。また、水気も量も極端に少ないおりもののときは、体内の水分が足りずに乾燥していることが原因です。これらのおりものが出たら、休息をとったり、しっかり水分を摂取するなど、自分の心と体をケアしてあげましょう。