こころ 拒食
摂食をめぐる問題行動の一つで、食べることを拒む状態です。太ることへの恐怖や体型に対する誤った考え方による極端なやせたいという願望によって、拒食が引き起こされる場合が多くみられます。また、反抗心や世の中を嫌う心、食事に毒が入っているなどの妄想から拒食が起こることもあります。異常に食べすぎる過食と逆の状態ですが、拒食と過食を繰り返す人もいます。
体型に対する誤った思い込みにより、自分の体型への不満や太ることに異常なまでの恐怖を抱くことがあります。そのため、やせようとして食事を抜くなど、極端なカロリー制限を続けたことがきっかけになり、拒食におちいるケースが増えています。容姿や体重に過剰な関心をもつ思春期の若い女性に多くみられます。
職場や家庭内でのストレス、受験などでの挫折、将来への不安などがきっかけとなって、拒食が起こる場合があります。完璧主義で自己主張が苦手だったり、人の評価を気にしすぎたりする、悩みを一人で抱え込んでしまう性格の人に起こりやすいといわれています。
肥満に対する恐怖心から極度のカロリー制限をしたり、指でのどを刺激して食べたものを吐いたり、下剤の乱用などによって20%以上も体重が減少してしまうことがあります。女性の場合は3カ月以上無月経が続くこともあります。思春期の女性に多く、元気で活動的に行動しているのに周囲が心配するほどやせていくのが特徴です。
思考や感情と行動との間にまとまりがなく、幻覚や妄想などがあらわれ、現実と非現実の区別がつかなくなる代表的な精神疾患です。不安や興奮などの面で感情の混乱や障害があらわれ、感情や表情に反応がなく、ずれがあります。話や心が通じ合わず、意欲低下で無気力になり、支離滅裂なことを言ったりします。自分が病気であることを自覚していないことも特徴です。外部からの働きかけに対する拒否や反抗として食事を拒んだり、妄想から拒食に陥ることもあります。
思春期の女性の多くにやせたいという願望があり、過度なダイエットが拒食症を招くケースが増えているといわれています。若い女性はモデルのようなスリムな体型に憧れますが、極端な食事制限をすることで健康が損なわれたり、命に関わる場合もあったりすることを認識する必要があります。
急激なダイエットが拒食のきっかけになることがあります。ダイエットが必要な場合は、無理な目標を掲げず、食事量を一割減らす、1カ月で体重を1キロ減らすくらいを目安に、時間をかけて少しずつ行うようにしましょう。
ストレスを溜めやすい人は、物事を完璧にこなさないと気がすまない人が多く、責任感が強く無理をしがちです。疲れを感じたら休む、悩みや不安は誰かに相談するなど、ストレスを早めに解決することが大切です。また、家に帰ったら、読書や音楽鑑賞など、好きなことをして気分転換をはかり、リラックスできるひとときを過ごしましょう。
体重が極度に減少し、無月経や貧血、むくみなどの症状があらわれた場合は注意が必要です。標準体重より20%以上やせるようなことがあれば、早めに受診しましょう。やせたいという願望が強かったり、精神的な問題があったりする場合は、家族の協力が不可欠です。本人が受診したがらないときは、まず家族が心療内科や精神科に相談してみましょう。
拒食症は食事を拒み、過食症は異常なほど大量に食べる、という一見正反対の食行動のように見えますが、拒食が続くとその反動やストレスから、過食症に転じることが少なくありません。拒食症の背景には極端なやせ願望があるため、過食をしては自分で吐いたり、便秘薬を乱用する排泄行動に出たりしてやせようとします。過食症は自分の意志で食べることを止められないのが特徴で、体重の増加を防ぐために食べては排泄行動をくり返し、その結果、低体重や拒食症に繋がっていくこともあります。