胸・肺 動悸
普段の心臓の鼓動より強く感じたり、心臓の動きが速く感じたり、脈の間隔が不規則に感じたりする不快な症状が動悸です。
過剰な興奮状態のときや、不安や緊張や恥かしい思いをしたときには、脈が速くなることがあります。これは自律神経の働きによって体が興奮して起こる生理的な反応です。このように原因が明確なときは基本的に心配はいりませんが、安静時にも関わらず動悸を感じる場合は、病院で検査を受けましょう。
お茶やコーヒーに含まれるカフェイン、アルコール、ニコチンなどには自律神経を刺激し、血圧を変化させて脈拍を速める作用があります。これらを飲みすぎると、胸に苦しさを感じたり動悸を引き起こすことがあります。アルコールは適量をたしなみ、タバコは禁煙するようにしましょう。
動悸の多くの原因は心臓病ですが、若い女性に多いバセドウ病(甲状腺機能亢進症)、うつ病などの精神疾患などでも動悸を感じることがあります。また、女性の場合、更年期や妊娠中など、女性ホルモンの分泌量が変化することによって動悸の発作が起きることもあります。
低血圧、狭心症の治療として血管を拡張する薬や、腸の働きを抑えるために交感神経を強く刺激する薬を服用していると、動悸の症状を引き起こすことがあります。また、糖尿病の治療のためにインスリンを過剰に投与してしまうと、低血糖に陥り動悸を招きます。逆に、高血圧や心臓病の治療薬を中止した後に動悸が起こることもあります。
心拍動が標準値(1分間に60~100回程度)を超えて、拍動が多すぎたり少なすぎたり、または心拍動のリズムが乱れるのが不整脈です。動悸とともに低血圧や失神、意識消失や心停止に至ることがあり、生命の危険にさらされることがあるので、心臓や循環器の専門医への受診が必要です。
狭心症は、心臓の筋肉に血液を送り込む血管が動脈硬化によって狭くなり、血流が不足して心臓が一時的に酸素欠乏状態に陥る疾患です。胸の中央からのどにかけて圧迫痛や呼吸困難、動悸といった発作が起こります。また、血管に血の塊が詰まって血管が完全に閉塞し、血流が途絶える心筋梗塞でも、不整脈による動悸や息切れが起こることが多くあります。
血糖値の異常な低下(通常50mg/dl以下)によって引き起こされる症状です。動悸、手足の震え、冷や汗の他、空腹感やイライラ感が募り、感覚が鈍ってきます。さらに放置していると、病状は進行し、異常行動、錯乱、痙攣発作に続いて意識を消失し、死に至ることがあります。また、糖尿病の経口治療薬やインスリンの投与量が多すぎたり、運動や長い空腹状態のときにインスリンが強く効きすぎたりした場合などに多くみられます。
全身の代謝をコントロールする甲状腺ホルモンの過剰分泌によって、全身のエネルギー代謝が異常に高まる病気です。20代~30代の女性に多く、のどぼとけ下にある甲状腺の腫れ、眼球突出、動悸が主な症状です。その他、手のふるえ、息切れ、不眠、生理不順や無月経、発汗、体重減少などの症状もみられます。
鉄分の不足などが原因で、酸素と結合して酸素を体のすみずみまで運ぶヘモグロビンが減少し、血液中の濃度が薄くなった状態です。ヘモグロビンの数値が男性は13.0g/dl以下、女性は12.0g/dl以下になると、貧血とされています。動悸の他に倦怠感、立ちくらみ、めまい、耳鳴り、頭痛、冷えなどの症状が起こります。
閉経の前後、約10年間をさす更年期を迎えると、女性ホルモンのバランスが急激に変化し、心や体にさまざまなトラブルを引き起こします。動悸や疲れ、だるさ、肩こり、のぼせやほてり、イライラや不安感などの症状の他、めまい、耳鳴りが起こることもあります。
動悸の発作が起こったら、楽な姿勢でおさまるかどうか、まずは一時的に様子をみましょう。このときに深呼吸を繰り返すことや、首の動脈や両目を静かに押すことで動悸がおさまることもあります。もし、動悸だけでなく胸の痛みや呼吸困難をともなう場合にはすぐに助けを呼びましょう。
安静にしているのに動悸が生じる場合は、内分泌ホルモンや心臓に異常がある可能性があります。また、もともと心臓を患っていて動悸があるときは、主治医や内科、循環器科を受診し検査を受けましょう。発作が起こったときには、できる限り、脈拍数や脈の間隔、強さなどをチェックしておき、受診時に医師に伝えるようにしましょう。
タバコはがんの不安を招くだけでなく、心臓の大敵でもあります。タバコを吸うと血管が収縮するため、瞬間的に血圧が上がります。 血圧の上昇は心臓へ負担をかけるだけでなく、繰り返すことで血管に負担をかけ、動脈硬化を促進してしまいます。また、喫煙は狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の発症のきっかけにもなります。心臓病のある人、心臓病が気になる人は、この際きっぱりと禁煙しましょう。