全身 打撲
転倒や衝突などの強い衝撃を受け、皮下組織、筋肉などが損傷されるのを打撲といいます。打撲は切り傷や刺し傷とは異なり、外への出血がないために軽く考えがちですが、皮下組織が大きなダメージを受けていたり、骨折していることもありますから、注意が必要です。
打撲は、棚で頭を打ったり、机に太ももをぶつけたりするような日常のささいな出来事で起きます。スポーツが原因となる打撲も多く、なかでもサッカーやバスケットでの接触事故が高い割合をしめます。また、足腰の弱いお年寄りは、態勢を変えるときにバランスを崩して敷居につまずいたり、階段やベッドからの転落などを起こすことがあります。このようなときも、予想以上に重症だったり骨折をともなうと、寝たきりになることもあるので、整形外科医、脳外科医への受診の有無の判断が必要になります。
打撲した部分やその周辺が炎症して、腫れや熱感があり皮膚が青紫色に変色しているときは、内出血といわれる皮下出血を起こしている可能性があります。また、頭部の場合はこぶができることもあります。患部は直後よりも、しばらく時間がたってから激しく痛みますが、軽い打撲であれば、1~2週間程度で腫れと痛みがおさまります。しかしこの皮下出血のあとが変色して青紫色のあざになって1カ月ほど残ったり、骨が突き出るようなときは、骨折を疑います。ただし、外見からは分からないことも多いので、痛くて動かすことができないときは骨折も考えて対処をしましょう。
打撲したときは、ライス(RICE)と呼ばれる4つの応急処置をするのが基本です。応急処置後は病院で診察を受けましょう。 打撲した部位を動かさないようにして、腕では三角巾や代わりのタオルなどで吊り、足では松葉杖を使うなどして荷重がかからないようにします。 打撲部位を中心に少し広めの範囲を氷を入れたビニール袋や冷却パックで冷やし、炎症を抑え痛みを緩和します。15~20分が目安で、これ以上続けて冷やすのは避けましょう。再び痛むようなときは救急処置だけでなくその後も断続的に続けます。 腫れや内出血を防ぐために、伸縮性のある弾力包帯やテーピングで、打撲部位を適度に圧迫しながら巻いて固定します。強く巻きすぎると局部的に血流が低下することがあるので注意が必要です。 打撲した部位を心臓より高い位置に保つことで、内出血を防ぎ痛みを抑えます。椅子やクッションなど手軽な高さのものを利用しましょう。ただし、打撲直後は冷却が原則ですが、炎症がおさまる回復期の4日目くらいからは温める方法に切り替えるよう注意が必要です。
(1)安静(Rest)にする。
(2)冷却(Ice)する。
(3)圧迫(Compression)する。
(4)高く(Elevation)挙げる。
手足の軽い打撲以外は、念のため医師の診察を受けるようにしましょう。また、打撲を受けた部位が特に頭や胸、腹などの場合は、体の中の器官にダメージを与えていることも考えられます。下記の症状が生じているときには、特に注意が必要となりますので、一刻も早く医師の診断を受けるようにしましょう。 ・頭に打撲を受け、痛みとともに吐き気やめまい、けいれん、そして意識障害があるようなときは脳に損傷がある可能性があります。また目や鼻、口、耳などから出血がみられれば重症だと考える必要があります。 ・胸に打撲を受けて、呼吸困難に陥るようなときは肺が損傷を受けている可能性があります。 ・お腹に打撲を受けて、強い痛みとともに吐き気があるときは、胃腸など腹部の臓器が損傷している可能性があります。 ・手足の打撲で、強い痛みと変形があるようなときは骨折の疑いが強くなります。
軽い打撲であれば、市販薬で炎症と痛みを抑えることができます。鎮痛消炎成分のインドメタシンやフェルビナクなどを配合した外用鎮痛消炎薬が効果的です。
赤ちゃんや幼児は運動機能が未熟で、頭も大きいのでバランスを崩しやすく、転んだときに頭を打つこともあります。そこで、受診の有無を判断する目安となる行動を覚えておくと役立つはずです。心配ないのは頭を打った後に、すぐ泣いてしばらくして泣きやんだときや、普段の様子と変わらないときです。ただし、打撲後に眠ったときは昏睡状態に陥っていないか、ときどき足の裏を刺激して反応があることを確かめましょう。すぐに病院に行く必要があるのは打撲後に何度も吐いたり、手足の動きがおかしいとか、けいれんや意識障害があるときです。なるべく刺激を与えないようにして、すぐに病院に搬送しましょう。