全身 神経痛
末梢神経が圧迫されたり、炎症で刺激された部分の神経に沿って起こる発作性の痛みと、疾患による神経痛の痛みを総称して神経痛といいます。鋭く激しい痛みが突発的にあらわれ、繰り返し痛むのが特徴です。主な神経痛には三叉(さんさ)神経痛、肋間神経痛、坐骨神経痛があります。
冷えやストレスは、痛みに対する感受性を高め、神経痛を引き起こしたり、助長して悪化の原因になることがあります。
腰部の脊柱管が老化によって変形したり、靱帯が厚くなると、脊柱管の内部が狭くなり、神経が圧迫され神経痛があらわれます。
いすに座って長時間デスクワークする人、自動車の運転時間が長い人やアイススケートなど、腰を曲げて行うスポーツをする人などは注意が必要です。椎間板という椎骨の間のクッションの役割を果たしているゼリー状の髄核がはみだし、末梢神経の根元を圧迫し神経痛があらわれます。
椎骨の間にある椎間板の一部が飛び出して神経の根元を圧迫する椎間板ヘルニアや、神経が通っている脊柱管が狭くなって神経を圧迫する脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)が神経痛の原因になります。また、手首の神経が圧迫されて腱に炎症を起こす手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)、その他腫瘍ができて神経の根元を圧迫する場合や、帯状疱疹の後遺症によるものも原因の一つです。
顔のこめかみから目、あご、頬と三本に枝分かれした三叉神経が支配する領域に起こる痛みを三叉神経痛といいます。多くは、脳に流れる血管がこめかみで神経に触れたり、神経を圧迫して起こります。目、あご、頬を中心に、突然、ぴりぴりと痛みがあらわれます。
背中から出て胸腹部の肋骨に沿って走っている肋間神経が支配する領域の痛みが肋間神経痛です。肋骨に沿って激しい痛みが起こります。肋間神経痛は、主に帯状疱疹や変形性脊椎症などの脊椎の疾患などが原因になります。帯状疱疹では、治癒した後に後遺症として神経痛が残ることがあります。
お尻から大腿、ふくらはぎ、足の裏に縦に走行している坐骨神経が支配する領域の痛みが坐骨神経痛です。主に、椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などによって、神経が圧迫されて起こります。
帯状疱疹は、体の中に潜伏していたみずぼうそうのウイルスが再び活性化して起こります。痛みをともなう小さな赤い水ぶくれが体の片側に帯のようにあらわれます。水ぶくれは1~2週間で治まりますが、神経細胞が傷つけられることによって後遺症として神経痛が残ることがあります。日本人のほとんどが持っているウイルスですが、お年寄りや疲れが溜まっている人など、体の免疫が落ちてきたときに発症しやすくなります。
骨と骨をつなぐ椎間板に亀裂が生じて、中の椎間板組織の一部が飛び出し、神経を圧迫することで起こります。首から腰にかけての痛みや足指のしびれ、片側の足に痛みやしびれが出るのが特徴です。若い人にも比較的多く、腰や足のつっぱり、運動制限が現われることが多くあります。お年寄りの場合、下肢痛が強く、歩行が困難になることが少なくありません。
加齢や長年腰に負担をかけることによって脊柱管が狭くなり、神経を圧迫するために起こります。安静時は症状が軽い場合が多く、歩き続けると下肢にしびれや痛みが出て動けなくなることもあります。立ち止まると症状は改善し、歩き出すとまた悪化するといった間欠性跛行(かんけつせいはこう)が特徴的な症状です。
手の関節にある手根管はトンネルのようになっていて、その中を正中神経と腱が通っています。手根管の中で正中神経が慢性的に圧迫されると、親指から薬指の半分にかけてヒリヒリとする痛みやしびれがあらわれます。デスクワークでパソコンをよく使い、かつキーボードを打つ時の姿勢が悪い人によくみられます。また妊娠や出産時に体がむくみ、神経が圧迫されて起こることも多いといわれています。
糖尿病はすい臓でつくられるインスリンの分泌や作用が低下し、血糖値が慢性的に高い状態になる生活習慣病です。この糖尿病によって、長期間高血糖状態が続くことが原因となって起こるのが糖尿病性神経障害で、運動神経・知覚神経系が損なわれ、手足の先にしびれや痛みが起きます。症状が進むと足の筋肉が萎縮し、力が入らなくなります。また、顔面神経麻痺が起きることもあります。
坐骨神経痛では、日常生活で正しい姿勢をとることが大切です。歩くときや、いすに座るときは背筋をまっすぐに伸ばし、脊椎のゆるやかなS字状カーブを維持することを心がけましょう。前屈みにならないような高さの机を選ぶといった工夫も大切です。
冷えると、痛みに対する感受性が高くなるため、少しの痛みでも強い痛みと感じるようになります。冬の寒い日や夏の冷えすぎるエアコンには十分に注意しましょう。ストレッチやぬるめのお風呂などで体を温めるのも良いでしょう。
ストレスや寝不足による体調不良も痛みやしびれに対する感受性を高めます。気持ちが落ち込むような抑うつ状態になると、痛みやしびれが悪化することが多いともいわれています。生活のリズムを整え、気持ちを明るく持つように心がけることが大切です。
いすに座るときには座板や腰あて、寝るときは腰枕を敷くなど、痛みをともなう姿勢や動作をなるべく避け、ゆったりとした気持ちで過ごすことが大切です。痛みが激しいときは、静かに横になって休みましょう。
温めることによって、血管を広げて神経に栄養を送る血液の流れを良くしましょう。お風呂や温泉で全身を温めたり、痛む部分をカイロなどで温めると良いでしょう。
神経や筋肉の機能維持に重要なビタミンB、B、Bなどの有効成分を配合したビタミン剤が効果的です。また、鎮痛消炎成分インドメタシンやフェルビナクなどを配合した外用鎮痛消炎薬や、消炎鎮痛成分イブプロフェンが配合された内服薬も、効果があります。
神経痛は、原因や部位によって得意とする診療科が違ってきます。腰痛をともなう神経痛であれば整形外科、三叉神経痛なら神経内科や脳神経外科、帯状疱疹やその後の遺症なら皮膚科や神経内科を受診しましょう。どこを受診していいかわからないときには、主治医に相談すると良いでしょう。
指で押さえると痛みが出る点を「圧痛点」といいます。医師の診察でも圧痛点を調べますが、自分で押さえることで、神経痛が出ているかを確かめることができます。とくに調べやすいのは三叉神経痛。眉毛の内側、頬骨の少し下、口角の真下のあごの骨の部分の圧痛点を押さえたときの痛みの有無で、三叉神経痛かどうかがわかります。